ほぼ不定期連載

 Conflict of Heroes: Awakening the Bear! ビギナーズガイド

   <第1回:アクションとアクションポイント>  by Takuya "Survivor"Suzuki

"Conflict of Heroes"(Academy Games)は、1940年代から現代に至る期間に勃発した様々な戦争を題材にしたウォーゲームのシリーズです。扱う範囲は戦争全体ではなく、戦場のごく狭い地域(せいぜい1、2km四方)での数〜十数個の歩兵分隊や少数の戦車などによる小規模な戦闘にフォーカスした、典型的な戦術級ゲームです。このシリーズのラインナップは現在(09年4月時点)、"Awakening the Bear! "のみですが、年内にはクルスクの戦いを舞台にした"Storms of Steel!"がリリースされる予定です。制作者はイラク戦をテーマにしたゲームまでも視野に入れていますが、当面はWWIIのみで、シリーズを通して共通した基本ルールを使用します。ルールの分量はこの種のジャンルの中では少なく、ウォーゲーム入門者に適した素材といえます。

 

 

 

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本連載は、ウォーゲームの初心者を念頭に置いた"Awakening the Bear!"のチュートリアルです。ルールの細目を全て網羅してはいないため、ルールブックが不要になるわけではありませんが、「やや理解しづらいかな」と思われる箇所を重点的に解説します。「ウォーゲームって何か難しいよね」という先入観が払拭できれば、筆者としてこれに勝る喜びはありません。あとは、ギリシア神話に登場する勝利の女神二ケの至言("Just do it")のとおり、実践あるのみです。

 

 

 

【超入門者向け解説】

 

Q:「デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!」で検索したら、このページに来てしまいました。ちょっと興味をそそられますが、そもそも「ウォーゲーム」って何でしょうか?できるだけ簡潔に説明してください。長ったらしいと、Googleに戻りますよ。

 

A:将棋やチェスを思い浮かべてください。これらは2人が向き合って、マス目が引かれた盤上のコマを動かして、相手の王様を獲ろうと戦いますね。原理的にはウォーゲームも似ています。2人で対戦し、盤上のコマを移動させ、攻めたり守ったりしながら、定められた勝利を得ようと頭脳を働かせます。ただし、原理はもう少し複雑です。戦いに参加するコマには各種能力を示す数値が振られ、盤はシンプルな格子でなく、様々な地形が描かれています。そしてサイコロを使って、個々のコマの戦いの帰趨にランダムな要素を加えています。ルールもものによっては数十ページもの分量があります。少しとっつきにくい側面があるので、以前はまったくの初心者にはパソコンやゲーム専用機の類似したゲームソフトを薦めていました(「信長の野望」とかね)。ですが、こういった電源ゲームも年を追うごとに複雑になり、マニア以外手に負えないものになりつつあります。ボード版は逆に、シンプルかつ奥深いものを目指すトレンドがありますので、最初からボード版にチャレンジしてみてはいかがでしょう?

 

■もう少し詳しく知りたい場合→Wikipediaの「ウォー・シミュレーション・ゲームへ」

■アクション・ポイント(AP)

 

盤上の兵隊は、そのまま突っ立ているだけでは、烏合の衆と変わりありません。分隊長(か小隊長か何かしらの指揮官にあたる人物)が「●●へ向かって進め」とか「××を撃て」と命令してはじめて、兵隊らは戦場の戦士として命を吹き込まれます。もちろん、敵の射撃を受けたり、突入してくる敵兵の群れを見て、自発的というか反射的に行動を起こすことも多いでしょう。このゲームも同じように、手番を与えられたプレイヤー(アクティブ・プレイヤー。つまり今これを読んでいるあなたです)が、ユニットのどれかに命令を発することで、それは行動できるようになります。

 

戦闘部隊の行動は主として移動と射撃ですが、これらをひっくるめてアクションといいます。そして命令を受けたユニットがアクションできるようになることを活性化といいます。

 

命令といっても、実際は1個のユニットを指して「このユニットを活性化します」と対戦相手に伝え、ユニットを人差し指かピンセットで動かすだけです。

 

 

活性化したユニットは、アクション・ポイント(AP)なるものを得ます。これは、ユニットが定められたゲーム上の時間(ターンといいます)内で、どれだけの行動ができるかをポイントで数値化したものです。この数値を消費することで、アクションを行えます。

 

活性化したユニットは7ポイントのアクション・ポイントを得ます。そのことを示すために、Track Sheetと印刷された紙(記録シート)の緑の欄の"7"のところにマーカーを置きます。

 

 

 

【超入門者向け解説】

 

Q:ユニットってなんですか?

 

A:英語の"Unit"という単語は多義的で、単位や部隊などを意味しますが、ウォーゲームで「ユニット」といえば、将棋・チェスの「駒」にあたります。ユニットは大抵、大小の規模の歩兵グループや、戦車、戦闘機といった兵器システムを表しています。これとは似て非なるものにマーカーがあります。マーカーは戦いに参加するものではなく、ユニットや盤に乗せて、状態の変化を示すのに使います。ユニットとマーカーを総称してカウンターと呼ぶことがありますが、これは特に物理的な存在(つまり厚紙でできた正方形の小片)自体を言及する場合に使います。たとえば、「抜き打ち印刷されたカウンターシートをカッターで切り離す」というふうに。

次に盤上の活性化ユニットを見てください。左上と右上にある数字に注目。左の数字は射撃した時に消費されるAPで、右の数字は1ヘクス移動した時に消費されるAPです。

 

 

 

このユニットは、射撃をすれば3AP、移動すれば1APを消費します(移動は状況によって追加のAPがかかりますが、それについては連載第3回目あたりで説明予定)。

 

7APを全部使い切ってしまうと、ユニットを裏返して「使用済み」であることを明示します。このターンはもう活性化できません。

 

それでは試しに、このユニットを1ヘクス移動させ、ソ連軍のユニットに向けて2度射撃させてみましょう。

 

[例1] ※画像にカーソルを置くとアニメーションを見ることができます。

 

 

 

【超入門者向け解説】

 

Q:ヘクスってなんですか?

 

A:六角形を英語で"hexagon"(ヘキサゴン)といいます。それを縮約したのが"hex"(ヘクス)です。大抵のウォーゲームの盤は六角形のマス目で区切られていますが、これをヘクスと呼びます。ヘクスは将棋・チェスのマス目にあたり、駒の位置を規定します。ちなみにヘクスの辺をヘクスサイドといいます。ルールで「ヘクスサイドを越える」という表現があれば、これはあるヘクスから別のヘクスへユニットを移動させることを意味します。

■コマンド・アクション・ポイント(CAP)

 

毎ターン、APとは別にコマンド・アクション・ポイント(CAP)というポイントもあてがわれます。APは1個1個のユニットに配分されるのに対し、CAPは各陣営(ドイツ軍、ソ連軍)全体に配分されたAPと考えるとよいでしょう。APは、どのシナリオであっても、どのユニットであっても7ポイントと定まっていますが、CAPはシナリオごとにまちまちです。

 

CAPの残量は、記録シートの青の枠に青いCAPsマーカーを置いて示します。

 

CAPを消費することで、ユニットのAPを補填することができます。上記のパラパラアニメに登場したドイツ軍ユニットは、移動(1AP)+射撃(3AP)+射撃(3AP)によって自身のAPを使い果たしてしまいましたが、CAPから1AP〜最大残っている分だけ持ってくることで、さらにアクションを続けられます。例えば、「もう1度射撃したい」と思ったら、CAPを3AP持ってきて、それを消費します。

 

[例2] ※画像にカーソルを置くとアニメーションを見ることができます。

 

 

 

■機会行動

 

将棋で、角行や飛車を敵陣の懐奥深くへ一気に進ませて「成ろう」とするのを見た相手が、「ちょっと待ったぁ!それに対応して桂馬を上げて動きをブロックします」ということはできませんが、このゲームではそれに似たことができます。実際の戦争で、敵兵がこちらに向かって進撃しているのに、「早くこちらの番がこないかな」と傍観しているのは不自然です。その不自然さを軽減するためにできたルールが機会行動です。これは、ユニットが射撃や移動といったアクションを1つ実行した時に、対戦相手のユニットが呼応して行う何らかのアクションをいいます。他の類似ゲームとは異なり、アクティブ・プレイヤーのユニットも機会行動を行えます。いずれにしても、機会行動を行えるのは未使用(=活性化していない)のユニットに限られ、1回でも機会行動を実行すれば即使用済み面に裏返ってしまいます。機会行動をするユニットは、APの取得も消費もありません。1回だけという規則さえ守られれば、移動、射撃、回復のどれを行ってもかまいません。

 

[例3] ※画像にカーソルを置くとアニメーションを見ることができます。

 

 

 

■コマンド・アクション

 

CAP「だけ」を使用したアクションをコマンド・アクションと呼びます。2つめのパラパラアニメに登場したドイツ軍ユニットの射撃は必要な3ポイント全部をCAPから借用したので、これもコマンド・アクションです。コマンド・アクションには大きな利点が2つあります。それは、未使用ユニットの機会行動に使った場合は、使用済みにならないことと、使用済みとなっているユニットでもアクションができることです。

 

直前のパラパラアニメで、もしソ連軍ユニットが単なる機会行動でなく、CAPを4ポイント使って(このユニットの射撃コストは4ポイント)のコマンド・アクションであれば、使用済みにはなりません。そして、以降ドイツ軍ユニットがまたアクションを実行したら、普通の機会行動ができるわけです(CAPがあり余っていれば、コマンド・アクションを繰り返すことも可能)。逆にパラパラアニメのとおり、普通の機会行動を先にしてしまい、使用済みになってしまっても、以降ドイツ軍ユニットがまたアクションを実行したら、コマンド・アクションで対応ができるわけです。

 

<第2回へつづく>

 

 

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