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■シミュレーションゲーム専門誌■【Command Magazine(コマンドマガジン) 】「コマンド・ザ・ベスト第10弾『大祖国戦争』」コマンド・ザ・ベスト第10号

『大祖国戦争』

(アート・ルピナッチ)

 

発売日:2008年6月20日

価 格:7,140円

 

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◆マップサンプル(全体1160x760mm/左右2枚 重なり約3cm)

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◆マップサンプル(レニングラード近辺)

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◆マップサンプル(モスクワ近辺)

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◆マップサンプル(コーカサス地方一部)

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◆カウンターサンプル1表(戦闘ユニット)

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◆カウンターサンプル2表(マーカー類)

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◆ドイツ軍先頭序列表サンプル

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■銃弾飛び交う母なる大地 勝利なしには帰れない

 

1941年6月22日、バルバロッサ作戦発動。ロシア国境部に集結した300万ものドイツ軍将兵は、当時最先端の軍事理論――電撃戦――を、ひっさげてロシア国内に進撃した。世界が固唾を飲んで見守っていた、わずか4ヶ月の間に、ドイツ軍は次々と勝利を重ね、ロシアの首都モスクワ近郊にまで到達したのである。まさに人類が体験したことのない軍事的成功だった。

 

その時、天候が変わった。侵攻軍には厳しすぎるほどに、あまりにも劇的に悪化したのである。クレムリンの尖塔が見えるほどの距離にまで前進しながら、遂にドイツ軍の攻勢は力尽きた。ジューコフ将軍に率いられたソ連軍は、侵略者に対して無慈悲な反撃を開始した。それでもは崩壊寸前の状況から、ドイツ軍はどうにか立ち直り、最初の一年をしのぐことはできた。だが、勝利は彼らの手からこぼれ落ちようとしていた。

 

『大祖国戦争』は、この人類史上最大の激戦――独ソ戦――を、ドイツが軍団、ロシアが軍レベルのスケールで追体験する2人用ゲームだ。両軍とも、この戦争に参加した全ての部隊を、弱小同盟国まで含めて指揮下に置くことになる。ドイツ軍が勝利するためには、ロシアの巨大な戦争経済が動き始める前に致命傷を与えるしかない。

 

ドイツ軍は1941年のうちにロシアを屈服させられるか? 42年になっても、41年の方針を堅持するか? それとも南方コーカサスの油田を奪取するために、軍を旋回させるか? ロシア軍は史実よりも早くベルリンに到達できるか? それとも、ドイツはしぶとく生き延びるのか?

よく調査された戦闘序列と、簡潔で再現性の高いルール。

 

『大祖国戦争』は東部戦線を愛するゲーマーの期待に応える、キャンペーンゲームの決定版なのだ。

 

■コンポーネント

●マップ 1120mm x 760mm 2枚(重なり3センチ)

●カウンター2枚(12.5mm 2枚/560個)

●プレイヤー補助チャート 両面カラー各2枚 合計4枚

●ルールブック 1冊(36ページ/カラー8ページ)

●ドイツ軍戦闘序列 1枚

●ロシア軍戦闘序列 1枚

 

プレイヤー数:2人〜

プレイ時間:8時間〜

ゲームデザインー:Art Lupinacci

出版:L2 Design Group

※『大祖国戦争』は,2004年にカナダのL2 Design Groupから出版された『Russia Beseiged』のライセンス版ゲームです。同作はThe Russian Campaignを彷彿とさせるスケールで描かれた東部戦線のキャンペーンゲーム(軍/軍団レベル)として人気を博し、2008年には第2版ルールが発表されています。ライセンス版となる『大祖国戦争』は、この第2版のルールに準拠したものとなり、ユニットのレーティングや序列も刷新されたものになっています。

 

デザインノート(『大祖国戦争』ルールブックより転載)

 

『大祖国戦争(原題:Russia Besieged)』のデザインを通じ、私は趣味人として最高の幸せを味わった。理想としていたゲーム出版を実現できたからだ。『大祖国戦争』は25年前から構想していたゲームだったが、様々な理由から今日まで形にできないでいたのだ。 

 

デザインとグラフィックには3年の時間がかかったが、これはとても楽しい作業だった。決して正しい方法とはいえず、また製作遅延の原因にもなったわけだが、それでも私はデザインと改訂作業の一つ一つに没頭しながら作業を進めた。そうしなければならなかった事情があったし、後悔もしていない。そしてとうとう、私は望ましい要素を盛り込んだ、プレイアブルで優れた内容の東部戦線ゲームを完成できたのだ。

 

デザインの最初の段階では、ロシアの戦争経済をどのようにゲームに盛り込むかという問題に心を砕いた。石油生産はロシアにとってのアキレス腱である。実にロシアの石油総生産量の75%が、攻撃や破壊に対して脆弱なコーカサス地上からもたらされていたからだ。コーカサスの喪失はきわめて重大な事態であり、スターリンの失脚さえ引き起こしかねない。

 

私は、とにかくも『大祖国戦争』にロシアの危うい石油生産という要素を盛り込みたかった。これには、ドイツ軍が到達しうるヨーロッパ=ロシア全域を盛り込みたいという気持ちも作用している(当然、コーカサスも、だ)。そこで私は、ロシアの工業生産を「石油」と「それ以外」に分けることで解決を図った。そのために、石油と機甲部隊を密接に関連づけたのである。石油が無ければ、機甲部隊を作ることができない。ゲームにおいてもっとも強力な打撃力を発揮するのは戦車であり、石油を失えば、ロシア軍はコーカサスを奪回するか、消耗が引き起こす確実な敗北に向かうかするまで、限られた機甲部隊しか使用できない。

 

WEC(戦争経済/工場)カウンターはロシアの生産能力や人口など、様々な要素を抽象化している。WECが減少すれば、損害を受けたユニットの回復が難しくなる。序盤にWECをいくつも失うようでは、敗北は避けられない。しかし、序盤のドイツ軍は破壊神と呼ぶべきほど強力であり、弱点がないわけではないが、それでも望むままに暴れることはできる。

 

一方、ロシアに深く侵攻しなければならない枢軸軍にも、いくつかの弱点がある。戦線が広がるにつれ、部隊の密度が否応なしに低下する。そしてロストフを越えるあたりから、問題が顕在化し始める。コーカサス侵攻を考えるなら、バクーに到達する頃には、占領地や戦線が二倍にもなるだろう。幸運を味方につけても、枢軸軍は現状の戦力を維持するのがせいぜいで、たいがいは戦闘によって損耗している。したがって、全戦線で効果的な攻勢を継続することは不可能になる。特にルールを設けずとも、歴史的な雰囲気を色濃く残したまま、こうした状況のシミュレートに本作は成功していると思う。

 

軍隊はどこでもかしこでも攻撃を続けられるものではないという現実を、戦略的視点に立ったウォーゲームは反映し切れていない事が多い。『大祖国戦争』では、プレイヤーが採用した戦略に従い、膠着した戦線には動きが与えにくいため、互いに敵のあらゆる弱点を突こうと努力することになる。枢軸軍にとっては不運だろうが、時間は味方になってくれない。したがって、あらゆる想像力を働かせてゲームに臨まなければならないだろう。

 

ロシア軍プレイヤーの目には、最初、自軍は頼りなく、まとまりがないように思われるだろう。しかし、あきらめることはない。増援が届くにつれ、ロシア軍は見る間に増強されていく。枢軸軍は、ゲーム開始時から、単に目の前の敵をたたくだけでなく、可能な限り速やかにロシア領に侵攻しなければならないという重圧にさらされる。その点では、枢軸軍にはいくつもの戦略的な選択肢と攻撃方法がある。私は、2つの目的を戦闘システムの中に反映した。第一は「戦闘結果表(CRT)」によるもので、敵の撃破と目標の奪取を狙いとしている。もう一つは「電撃戦」(BAT)で、敵軍に直接打撃を与えることを重点にしているが、真の狙いは、敵の戦線深くに侵入して、敵ユニットの後方を切断することにある。

 

さらに、インパルスを問わず自由に使える空軍地上支援を盛り込んだ。ベテランプレイヤーの手にかかれば、攻撃によって危険が増大するが、包囲の脅威も与えられる。後半はロシア軍優位に向かうが、両軍とも手に汗握る展開になることは間違いない。

 

空軍ルールも難しい課題だった。しかし、デザインの当初から、空軍戦闘用のレイヤーや、空軍独自のルールを設けるのは避けようと決めていた。軍団レベルのゲームでは、そうした配慮は無用だろう。結果として、空軍の役割は、敵部隊を除去する際の支援という最小限に留めた。私は、熟考の上で、制空権の獲得を巡る空戦要素を省略した。まず、開戦当初の制空権は枢軸軍が握っているため、彼はマップ上のどこでも自由に空軍を展開できる。しかし、時間が経過するにつれ、ロシア空軍のパイロットも実力をつけ、航空機の性能も向上し、生産数も増加する。練度や経験ではルフトヴァッフェのパイロットに及ばなくても、量で穴埋めをし、いつか敵を凌駕するのがロシア空軍の流儀である。空軍ユニットの使用数を時間経過とともに増減することで、これを表現した。

 

空軍ユニットには、対になる基地カウンターを用意した。この基地は、「飛行場」という言葉以上の内容、つまり地上要員や燃料、修理工廠などを含んでいる。軍用機の運用に不可欠な組織全体を象徴しているのが、基地カウンターである。わたしは、抽象化が過ぎて、こうした要員が見落とされたまま、非現実的な空軍の運用を許すようなことだけは望んでいなかった。

 

プレイヤーは長距離の空軍地上支援任務をこなし、都市に着陸できるが、ここに基地機能が移動してくる必要があるため、次のインパルスにはこの空軍ユニットを連続して使用できない。燃料や武器を持たない飛行機は、飛ばしても仕方がないのだ。この処理は、本作の中でもかなりエレガントにまとまった部分だと思う。難解なルールを導入しなくても、地上支援という任務に関する現実性を盛り込むのに成功したと自負している。

 

空軍運用の自由度を高めるために、インパルスをまたいで使用できるようにも工夫した。地上支援を実施するか、第2インパルスの支援に備えて基地の移動準備をしておくか、プレイヤーはいずれかを選択できる。両方を実施できないのだ。これらをどう組み合わせるかはプレイヤーの自由であるが、私は地上部隊のパンチ力が充分に活かせる第1インパルスに集中して使用する方が好ましいと考えている。簡単なルールで高い自由度と雰囲気を盛り込めていることがわかるだろう。

 

本作の大きな特徴として強調したいのが、戦闘に伴うステップ喪失である。ほとんどのユニットは2ステップの損害を受けると除去される。スタックしていれば、防御側はそのヘクスに長くとどまる体力を得られる。このことは、戦闘において軍が消耗する様子を間接的に再現している。戦闘を続けるほど、1ステップしか残っていないユニットが増加し、それを回復するための補充ポイントも残されていないという羽目になる。主戦線の側面を疲弊したユニットで固めざるを得ない展開は、ゲームに変化と流動性をもたらすだろう。

 

『大祖国戦争』全体のデザインについて、私はジョン・エドワーズの偉大な傑作である『ロシアン・キャンペーン』を、おおまかにではあるが踏襲している。『ロシアン・キャンペーン』には無視できないエレガントな工夫が各所に用いられているが、私はこれらに手を加え、軍団/軍レベルのゲームをもっと楽しいものにしようと望んでいる。『ロシアン・キャンペーン』はゲームデザインの金字塔であり、簡単でありながら、繰り返し何度でも遊びたくなるほど適度な難易度に設定されていた。

 

次の協力者がいなかったら、このゲームはもっと不完全な作品になっていたことだろう。Bruno Sinigaglioは枢軸軍側の効果的な運用法を示すとともに、レンドリースのルールに関して有用な助言をしてくれた。Rob Beymaと彼の仲間たちは、際限ないテストプレイに取り組み、ルールの改定や、見落としを正してくれた。Robをはじめとする皆に感謝したい。彼らの経験や深い洞察、知識が無ければ、本作のレベルはここまで向上しなかっただろう。

 

Ken NeedとAaron Silvermanは、とりとめのない私の書き付けを、見事なルールにまとめてくれた。彼らを早く雇わなかったことを後悔している。Alex,Larry,Wally,Doug,Daleら、トロントでのゲーム仲間たちも貴重な助言をしてくれた。『大祖国戦争』に協力してくれた仲間たち全てに感謝したい。もし、それでも誤りが発見されたら、それは全て私個人の責任である。

 

【第2版について】

 

第2版では多くの改訂を加えている。特にゲーム開始時について触れておきたい。この改訂では、ロシア軍の不完全な戦争準備と、ナチスの完全な奇襲の再現に重点を置いた。気に入ってはいたものの、初版では見送ったルールに、インパルス毎の鉄道許容があげられる。ルールそのものの改訂は少なく、代わりに選択ルールを増やしたのが、第2版の特徴だ。選択ルールを全て盛り込めば、歴史上最大の激戦をシミュレートした、痛快でテンポの良い本作に、さらなる深みと興味を加えられる。

 

ここで再びBeymaの熱意に感謝したい。天候に関する競技ルールや修正の導入と整理に、彼の協力は不可欠だった。改訂によって、東部戦線ファン、『大祖国戦争』ファンはさらなる楽しみを得られるだろう。

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