ジャパン・ウォーゲーム・クラシックス-入門用ウォーゲームの決定版-

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日露戦争-満州の廣野を揺るがした20世紀最初の近代戦

■JWC(ジャパン・ウォーゲーム・クラシックス)─『日露戦争』─ゲーム・レビュー
■JWC第2弾は名作『日露戦争』コマンドマガジン89号掲載)

『日露戦争』(EP/CMJ)と云えば古株のゲーマーにとっては知らぬもの無き古典にして名作。

えてして名作は「もう飽きた」とか「お互いの手の内を知り尽くした」などと云う言葉や「幾つかのバグや解釈違い」から“論争”が発生する点も指摘される。そう云った面から離れた上で見ると…。

装甲部隊も戦車も航空機も無い、だから、機械化移動・戦闘も無い。制空権争いや、空挺降下も無い、オーバーランも無い。

複雑繁多な特別ルールも少ない、強いて云うならZOC無視の戦闘後前進が特異で、ルールブックも分量少なく、極めて平易な為購入後に自分用クイックリファレンスを自作するなら精々A4紙一枚に収まると見る。

移動→戦闘→再編成 のみと言って良い程に単純簡便なターンシークエンス。

兵科の違いも僅か3つ、歩兵、砲兵、騎兵。砲兵の1ヘクス先への砲撃能力がある事、後は戦闘後前進の能力以外は単純な戦力移動力の違いでしかなく覚え易い。(同規模同一兵科の各ユニットは全部同一戦力で、各師団戦力が違う、等での煩雑さが無い)

無い無い尽くしの後は有る有る尽くし。動きの激しい、ハッキリした面白さが有る。慣れれば1日の集会で複数回対局を可能とする手早さが有る。日本軍には戦略主攻軸選択の自由、ロシア軍には極序盤、盤面のメインステージとなる方面に選択権が有る。両軍共に増援編成に自由が有る。テーマとしては極めてメジャーで、巷に溢れる資料本やネット情報へのアクセスの容易さが有る。日本が「勝った」と言える戦争で”思い入れ”のし易い要素が多々有る。(郷土から出征した部隊が…、曽祖父が某旅団で…)

長々しく書くよりも一言で纏めてしまおう。

『簡単、面白い、奥が深い』

これだけで充分だと思う。実際問題としてシステムも数値も盤面の形状(地形や道路、鉄道と云った進撃路や要衝の位置関係)も極めてシンプルなので複雑な計算までは殆ど要求しない。覚えるだけなら、実地会場にて並べて貰ってルールの説明を受けたら始められる位に簡単ではある。

面白さ、については、全体に各ユニットの移動力が大きい事でジリジリとした進撃形態になる山地方面と旅順口以外は動き出したらダイナミックな機動戦が展開されて、強固なロシア軍戦線が、一撃でボロボロになる事もあれば、強烈な反撃を受けて日本軍の進撃が頓挫する瞬間も実見出来る筈。

旅順要塞の攻略、山地方面拠点箇所突破はヘクス数的な動きこそ少なくても、歓声が上がる瞬間を見る事になるだろう。

そして、最終ターンの最後のロシア軍反撃VPギリギリの瞬間でのダイス一投は、将に死命を決するスリリングさで、何回やっても中毒性さえ感じる程に面白いもの。

初版発売後四半世紀を過ぎて尚、再販の対象となる理由として、強く指摘したいのが本作品の“奥の深さ”にもある、と言える。

膨大な数のシミュレーションゲームが発売されている、流行した作品も数多有る。だが発売後10年を過ぎて頻々とプレイされている作品は少ない。何故だろうか?

どうも「奥行きが足りない」事が指摘されて曰く「必勝法が確立されてしまう」。また曰く「○○が発生すれば必勝、無ければ敗北」と云った“結論”が出回ってしまうと、そこで伸張が止まってしまう作品が多いと見る。

『日露戦争』は有効な戦法が確かに有る。両軍共にテクニカルな戦法や、トリッキーな妙手が幾つも開発されたのだが、その都度、欠陥が見つかったり、きちんと対抗策が開発される事で、発売後四半世紀に至っても尚、「“結論”は確立されていない」。

間口は広いのに物凄く奥が深いのである。

プレイヤー間の技量差が勝敗と直結するのは全てのゲームに云える事だが、本作は初心者、新規参入者が習得しようとした時、非常に短期間で上達出来る良さが有る。また、本作品を会得した新規参入者は爾後他の多くのゲームに転用可能な感覚を多く習得している事に後から気が付く筈である。

長らく続いていた絶版・完売状態の後で本作品が再度リリースされる意味は大きい。恐らく、日本シミュレーションゲーム史上、トップクラスの既プレイ人口を有する作品であると云う事は「やってみようか」と思えば現物さえ入手出来れば相手を探す苦労が少ないメリットが有り、失われた”共通言語”の回復と言う事も出来る。

また、別の長所としては、新規参入者へのアクセス教材としても好適であると言える。今回のリリースで幾つかの点の明確化や解釈違いへの回答作製の試みが進み、初心者にもプレイし易くなるマーカー類の増設も図られる由。

ベテラン勢から新規参入者に到るまで、多くのゲーマーに資する事を期したい。

(文:山崎美鶴)

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