国際通信社から、2009年7月に新ブランド「ジャパン・ウォーゲーム・クラシック」がリリースされる。その第一弾は作戦級空母戦ゲームの名作『日本機動部隊』。単なる再版にとどまらず、「良い作品をいつでも買える環境を維持しよう」という試みである。
「ジャパン・ウォーゲーム・クラシック(JWC)」とは、平たく言えば「日本のウォーゲーム・スタンダード・ナンバーを、いつでも、誰でも買える環境を残していこう」というプロジェクト。80年代の全盛期にウォーゲームを楽しんでいた人が、社会人となり、生活がひと段落したところでこの趣味を再開しようとした時、確実に手に取り、また確実に楽しめるゲームを提供していきたい、という思いが込められている。
当時楽しんでいた人が今も楽しめるということは、当時から今までずっとウォーゲームを趣味にしてきた層もまた、楽しめるということである。
もっとも、JWCでリリースされる作品は、既にウォーゲーム専門雑誌「コマンド・マガジン」の付録として一度は再版されたものが殆ど。ビジネスとして割り切れば、再び版を重ねる利は薄い。それでもあえて再版するのは、これが今、我々ができる市場への貢献だと考えるからである。
そしてエポック社ワールドウォーゲーム(WWG)シリーズの権利を管理されている鈴木銀一郎氏が、この考えに賛同してくれたことで、JWCが実現した。
第一弾は『日本機動部隊』
JWCはWWG初期の作品を中心に、年1~2点をリリースしていく予定だ。先陣を切るのは、2009年7月発売の『日本機動部隊』。
同作品は『ドイツ戦車軍団』とともに、入門者向けゲームとして開発された。事前に「タクテクス」誌に詳細なデザイナーズ・ノートが掲載されたこともあり、発売と同時に売り切れ店が続出したほどである。
入門者向けを意識したステップ・アップ方式のルール構成となっており、
・真珠湾攻撃
・マレー沖航空戦
・スラバヤ沖海戦
を順にプレイすることで、航空攻撃、索敵、水上戦闘をマスターできた。いずれもソロプレイ・シナリオだが、単にルールを読むのではなく、ユニットを動かし、チャートを見てダイスを振るので、より理解を深めることができた。シナリオが時系列で並んでいるのが、何とも心憎い。
基本システムが理解できたら、いよいよ空母戦だ。以降は2人用ゲームとなる。
・空母vs空母*
・珊瑚海海戦
・ミッドウェイ海戦
・第2次ソロモン海戦
・連合艦隊vs太平洋艦隊*
*……仮想戦シナリオ
これもステップアップするごとに特別ルールや扱うユニットが増え、複雑なゲームが楽しめるようになっている。
「コマンド・マガジン」誌では第10号の付録となり、絶版となって久しく、以前から再版の要望が強かった。そうした背景もあり、JWC第1弾に白羽の矢が立ったのである。
JWCを「共通言語」に
『日本機動部隊』の付録版はコンポーネントの制約もあり、一部マップが統合されたり、省略されたものもあった。JWC版は、使用頻度の低い一人用練習シナリオのマップは、二人用シナリオのマップ裏面に印刷されることにはなるが、省略されることはなく、また艦隊編成シートなどは使いやすいものになる予定だ。
反面、付録版では追加シナリオとして、「南太平洋海戦」「ソロモン・キャンペーン」の2本が用意され、他に誌面で「セイロン沖海戦」などのバリアントが発表された。カウンター・シートの余白を利用してこれらで使用するユニットを用意される。また専用のwebサイトを立ち上げ、各種サポートを行っていく。
JWCの商品は今後も増えていく予定であり、候補に挙がっている商品はどれも馴染み深いものばかりだ。そのうち、あなたが通っているサークルの例会に、JWCのゲームを抱えた「復帰組」が顔を出すかもしれない。その時は是非、対戦して欲しい。アイテムの魅力を知っているならもちろん、知らなかったとしても、日本のウォーゲームのクラシック・ナンバーの良さを改めて実感できるだろう。